「にきび」に悩む29歳女社長――野口ともこ「にきび」

最近は面白い漫画によく出会う。
今回紹介する「にきび」もその一つである。


にきび―半田家長女・四穂の恋愛 (Feelコミックス)

にきび―半田家長女・四穂の恋愛 (Feelコミックス)


内田春菊の推薦コメントが、なかなか言い得て妙だ。
「この作品には、デトックス、責任ある仕事、セクハラ、愛あるセックス、二股、
 DV、近親姦、ゲイ(男女とも)、幼なじみ、メガネ男子、妹萌え、トランス、
 巨乳VS豊胸、親子問題、殺人、PTSD、妊娠、結婚などの要素が盛り込まれています。
 これだけ入って色気・考察満載。お得!」


読んでみると、まさにその通りで。
これらの要素をとても上手く回収した作品だと思う。


しかしながら、さすがにこれだけでは本作の魅力を伝えきれないので、
拙著ながら紹介させていただく。





【以下あらすじ】  予備知識ナシで読みたい人は注意してくださいね。






半田家の長女、四穂は女社長。
大手ゼネコンを辞め、父の経営していた建設資材会社を継ぎ、
従業員19人の生活を背負い日々奔走している。

そんな彼女に、過労がたたってか「にきび」ができる所からこの話は始まる。


皮膚科医「――あなたの場合男性ホルモンが原因かな。フェイスラインにできてるし」
吹き出物、かあ。
ヤな言い方。「ニキビ」でいいじゃないよ。
四穂「男性、ホルモン……」
皮膚科医「生理いつからきてないの?」
四穂「3ヶ月、くらい――」
さらにその医者は、恋人はいるか、仕事は忙しいか、人間関係、
睡眠時間、タバコなど、あたしのプライベートを根掘り葉掘り聞いた。
なんか、あったまくるなこの医者……。
とどめはこれだ。
「――セックスはしてる?」


にきびの治療にあたり、四穂は日常生活における「女性ホルモン不足」を指摘される。
今年で29歳だが、働き詰めの四穂には一度も彼氏ができていない。


ニキビができてから暫くして、四穂は幼馴染で社員の「てっちゃん」と
付きあい始めるが、そこで半田家の家庭問題が頭を悩ませる。


彼女の家庭は問題だらけ。
父は威圧的で、すぐに怒鳴るし暴力もふるう。

四穂には兄が3人いるが、
長男は事故死、二男は失踪、三男は家の金を盗んで性転換。


四穂が幼いころから、
威圧的な父と無駄に反抗的だった二男・英二は殴り合いのケンカを繰り返し、
母も三男・勇三もそれを止められない。


表向きマジメだった長男・一郎はその陰で四穂に性的な関係を迫り、
彼を信頼していた(というより家庭で他に理解者がいない)四穂はそれを受け入れてしまう。


そうした過去のことが頭をもたげるが(一郎が事故死した今も遺恨は残る)、
大手ゼネコン時代の同僚らとの再会を経て、自分を見つめなおし、
彼氏「てっちゃん」との仲も深まっていく。


そんな中……失踪していた兄、二男・英二が帰ってくる。
英二は「妹に手を出したら殺す」とかつての舎弟に触れまわっており、
てっちゃんもその例外ではない。


そんな中、てっちゃん(32歳)は「四穂と結婚したい」と言いはじめ、
四穂の父と、英二に挑むこととなるが……



ここまで。
一見するとドロドロした話に見えるが、
サバサバした性格の四穂が感情豊かにそれを乗り越えていく姿には、
何か励まされるものがある。

興味のあるかたはぜひご一読を。
イチ漫画読みとしてとても気に入った作品。