本が読みたくなる本――永江朗「不良のための読書術」

出版年鑑2009によると、2008年の
・書籍収録点数が79917点(件数にすると78013件)
・雑誌点数4353点(創刊187休・廃刊186)
だそうである。



書籍だけでも、単純計算で80000÷365≒220。
毎日、約220冊の新刊が現代では刊行されている。



これは、驚くべき事実だ。
当然、書店にも毎日220冊も新刊を陳列するスペースなんてないから、
本は洪水のように出版され、続々と絶版になっていく。



そんな中で、いかに面白い本と出会い、読書家ライフを謳歌するか。
この問いに答えてくれる良書が、「不良のための読書術」である。



不良のための読書術 (ちくま文庫)

不良のための読書術 (ちくま文庫)



背表紙の紹介文。
洪水のように本が溢れる時代。『マジメなよいこ』ではなかなか面白い本にめぐりあえない。不良による不良のための読書術を、本の成り立ち、流通にまでさかのぼり伝授する快著。プロが読んでも面白い。
明快で良い表現の文だな。



著者の永江先生は、編集者やライター、評論活動を経て、
いま早稲田大学文化構想学部で客員教授をなさっている(だから私は「先生」という呼称を付けた)。
「書店巡り」なる企画をサークルで敢行した時も、大変お世話になった。



プロの方にこうした言い方は失礼かもしれないが、
とにかく出版業界の事情に明るい方である。



この本の語り口も、穏やかさの中に「遊び心」が利いた独特の魅力があって、
まるで先生から講義を聴いているかのような感覚を覚えた。



さて、この本の構成は以下のようになっている。



第一章  いったい誰が本を読んでいるのか
第二章  ゴダール式読書法のススメ
第三章  いわゆるブンカが滅びたあとで
第四章  本は見る前に買え!
第五章  本の中はおいくら?
第六章  本の流通の謎が解けた!
第七章  読む本は本屋で決まる
第八章  本屋もショーバイ
第九章  図書館をしゃぶりつくせ
第十章  古本屋大陸の冒険と探検
第十一章 本を閉じてからの大切なこと
結び   不良なヤツほど本を読む



すでに読書家を自負している人は、「そうそう、そうなんだよ」と楽しく読めるし、
(というか、読書家は絶対この見出しに生理的好感を示すはずだ)



本をたくさん読みたいけど、なかなか敷居が高そう……と思っている人にとっては
なかなか新鮮な気づきが得られるのでは。



しかし、他ならぬこの本自身を「不良の読書法」で読んでしまったのは
些か皮肉が利いていると思うが。



嗚呼、本が読みたい。
明日は図書館に籠ろうかな。