しりあがり寿「表現したい人のためのマンガ入門」

マンガ家しりあがり寿の創作論。
この作者の認知度は決して高くない。マンガ読みを自称する人ならたぶん知っているけれど、
一般の人に受け入れられる画風・作風ではないし、また大々的なプロモーションも行われていないのだ。

しかし彼の漫画には独特の「味」があって、単純な娯楽的カタルシスではなく
読者に思考のタネを撒いてくれるマンガを描く。

そんなしりあがり寿の創作論。
彼には１３年間のサラリーマン経験があり、
某メーカーの広告宣伝やパッケージデザインを担当していたそうだ。

「『作品』か『商品』か」という項目に筆を向けるのは、
彼がサラリーマンとして商品をプロモーションする立場を経験しているからだろう。

こんな作品を作りたい、という話に終始せず、
いかに読み手に受け入れられ、市場に「ブランド」として作品を流通させるか。
しりあがり寿はこの視点を忘れない。

だから私はこの本を、「創作をはじめてみたい」と漠然と思っている人に薦めたい。
かたや、「自分の書きたい作品は、こういう世界観で、ターゲットは〜〜なユーザで、登場人物には○○な要素を持たせ……」と既に具体的なイメージを固めている人には、「そうそう、そうだよね」という感想しか懐かれないかもしれない。

結局、この本でしりあがり寿が述べた内容が理解できれば、
あとはひたすら書いて、試行錯誤して、自分の世界観やブランドを創っていくしかないのだ。

さて、小説を書こう。