鍋と、生きがいと、わたし。

「Yさんの家で、鍋がしたい」



いつのことだったか、誰かがそう言った。
そして昨晩、下落合のYさん宅にて、
ささやかな鍋パーティが催された。



集まったのはETIC.の仲間たち。
まず高田馬場西友で買い出しをする。



周知のことだが、この手の宴会は
買い出しのときが最も楽しいのである。



さて、高田馬場西友では、
立地が立地だけに、大学生とおぼしき集団を多く見かけた。



――彼ら・彼女らも、我々と同じだろうか。
これから、同じような楽しみが待っているのだろうか。



呟くように、そう考えた。



しかしながら、我々と彼ら(西友にいた他の学生集団)とで決定的に違う所がある。
彼らはあくまで「集団で共同作業をする」ことを念頭に置いた行動をしていたのだ。



すなわち、男女5,6人の群れで、「あれにしよう、これにしよう」
とじっくり時間をかけて買い出しをしていて、
「買い出しをする時間を共有したい」というのが前面に出ていた。



かたや、我々と言えば。



――超、分業制。



まずK君が持ち前のリーダシップで買い出しを3つの班に分ける。
「食材班、お酒班、デザート班で行きましょう」。
振り分けられるメンバー達。



仮に女の子がいなければ、デザート班は存在しなかったのだろうけど。



効率的で、迅速な買い出しでしたとさ。
傍から見るとどう映るのかは解らないけれど、これはこれで楽しいんですよ。



  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □



それから。
いろいろあって、キムチ鍋の完成。



鍋をつまみ、酒を飲み、具材を適宜に足しながら、歓談する。
この歓談が良い意味で暑苦しく、エネルギーに満ちているのがETIC.らしい。



とりとめのない話から、生き方や、自らのビジョンについての希望や葛藤まで。
不思議なことに、聞いているだけでなぜかエネルギーが湧いてくる。



楽しすぎて、飲み過ぎた。



寝たのは4時で、起きたのは6時半。



不思議と頭脳はしゃきりとして、思考が澄んでいた。



ふと、散歩にでかける。



私は、朝の住宅街を歩くのがたまらなく好きだ。



冷たい空気が肌を凛と撫でる感覚。
耳に心地よい鳥の鳴き声。
行き交う人は、ジョギングをしていたり、犬の散歩をしていたりする。
窓の灯った家は、もう仕度を始めているのだろうか。
わき道を歩く猫は……そんなことお構いなしで。



――街に生きとし生けるもの全てが、美しい。



それらを噛み締めるように。
下落合の閑静な住宅街を、30分ほど渡り歩いた。



散歩から戻ると、ちょうど皆起き始めたころで、
ほどなくしてそれぞれの帰路についた。



早朝の中央線、下り電車。
これも好きだ。



人がいなくて見通しが良いから、東京の街並みがパノラマ化する。
中央線特有の風情が身に染みるのだ。



それに浸っていると、思いのほか早く吉祥寺に着いた。
終わってみると、あっという間の楽しい時間。



ささやかな感傷と折り合いを付けながら、駅を出る。
すると、そこにも大学生風の男女5、6人がいて、
「じゃ、またねー」と言い合っていた。



また、私は、呟くように考えた。



――彼ら・彼女らも、我々と同じだろうか。
先ほどまで、同じような楽しみに浸っていたのだろうか。



生きとし生けるものは、美しい。